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JAPAN ECONOMIC REPORT
07.09.22
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■マネーは消えず
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この夏、金融市場を大きく揺るがしたサブプライムローン問題。決して突如とし
て現れた話ではなく、今年に入って3度目の波であった。1度目は、2月の下旬
に延滞率が上昇していた低信用者向けの住宅ローン(サブプライムローン)の債
務返済不履行が、その貸し出し専業業者を襲い、その殆んどが破綻することとな
ったというもの。これについては、専業会社の買収、整理、合併等のビジネス再
編という一見合理的なプロセスを経て話が収まった。続いて、3月下旬にサブプ
ライムローンの証券化ビジネスで潤ってきた大手金融機関が損失を被るという懸
念による波。これは、その決算発表により影響はさほど大きくないという思惑が
台頭したことで収束した。そして、第3波。6月末大手証券会社の子会社のヘッ
ジファンドがサブプライム担保証券の運用で大きな損失を被ったことが判明し、
各方面への悪影響が懸念されるに至った。
ファンドはレバレッジを利かせて(資産を担保に小資本で証券会社や銀行からの
借入により)投資を行なうことから、ファンドの損失の影響は証券会社や銀行に
も及ぶ懸念が生じ、さらに、ファンド或いはファンドに貸付を行なっている証券
会社や銀行はこの投資を金融商品化し、内外の投資家に切り売りしてリスクを分
散している為に、一体どこの誰がどの程度損失を被っているのかよく分からない
話となってしまったのが実情である。この「もやもや」としたところが、金融市
場における不安感を一層増長したとも言えるだろう。
ファンドの著しい台頭、資金のグローバル化といったあたりが98年に起こった
LTCM破綻ショックによる金融不安当時の環境からは大きく異なっていると考
える向きもいるだろうが、本質なところは10年前と大きく変わっているとは思
えず、詰まるところは「バブル」だったのである。過剰流動性により行き場を失
ったマネーが溢れ、マーケット全体として「リスク」に対する感度が鈍り、その
リスク分析のプロである格付会社も含めて、投資資産に対する適正評価ができて
いなかったところに、一気にその揺り戻しがかかったということである。
特に米国は極端な国である。右に向かい始めると右に一気に流れていくし、それ
が今度は左に向かい始めるとこれまた一気に左に流れていく。米国の買収マーケ
ットも、これまでは投資家から大量の資金を集めたファンド(海外ファンドも含
む)が一大プレーヤーとして台頭し、買収案件のかなりの割合についてファンド
が関与していた状態であったが、この夏、とりわけ8月以降はパタリと動きが止
まってしまった。今回の件を機会にファンドも投資基準等を見直さざるを得なく
なり、また、銀行や証券会社も自身のバランスシートを使っての投資や貸付を行
なうことには極めて慎重となるに違いない。ファンド勢が体制を整えてマーケッ
トに出て来れるにはまだ数ヶ月はかかるだろうし、姿を再び現し始めたとしても
投資基準は厳しいものになっているに違いない。また、買い手(投資家層)が少
なくなっているため、売り手サイドもしばらくは様子見とならざるを得ない。結
果として、これまでフル回転で循環していたマネーの流れの動きは鈍るとともに
そのボリュームも大きく減少するということになろう。
サブプライムローンという問題のみに着目すれば、米国住宅市場の冷え込み、国
内消費の落ち込み、米国経済のファンダメンタルズの悪化というような、ごくあ
りふれた話のみで終わってしまうだろうし、また、先週のFRB(米国連邦準備
制度理事会)がFOMC(連邦公開市場操作委員会)にて0・50%の利下げを
決定した前後より「グローバルな問題」から「米国固有の問題」という方向に話
が回帰してきている感もあるが、どうも上記の資金の流れの停滞というところが
ジワリと経済活動に影響を与えてこないかというところも気になるところである。
そういった一抹の不安はあるものの、楽観的な見方ができる材料も数多く揃って
いる。アジア経済は、10年前のアジア危機の頃とは状況が異なり、アジア各国
ともには高成長を続けている。ユーロ圏も極めて良好で、アメリカ経済等は蚊帳
の外という状況。日本の金融機関も不良債権問題をほぼ一掃して堅固な基盤を築
きつつある。サブプライムローン問題が起こったとはいえ、マネーが消えてなく
なったわけではない。一時的に行き場を失った投資マネーが、ひとまず堅調な商
品マーケットへと流れて、原油にいたっては1バレル80ドルを超えるといった
状況となっているが、今は次なる優良投資先を模索している時期ともいえよう。
次なる優良投資先?そろそろ日本の出番が来てもよいころか・・・? 【編】
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