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            JAPAN ECONOMIC REPORT
               09.09.28(通巻603号)

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「日本経済最前線の視点から、理論ではなかなか学べない日本経済の現状や見通
しを分かりやすく説明する無料マガジン」の筈でしたが、事情により2006年
より米国に在住しております。
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円高ドル安が進んできた。ドル安は米国からみえば輸入価格の上昇等を通じてイ
ンフレの種となるので、従来であれば過度なドル安進行は米国側も歓迎できなか
ったであろうが、現時点においては、米国ではデフレ(物価下落)による経済萎
縮の方が心配されており、また、輸出振興にも寄与するので、全く気にする必要
はないというものであろう。一方、日本側からすれば、デフレを助長しかねない、
輸出企業にダメージを与え、株安要因にもなり得る、日本企業も株式評価損や為
替換算差損により会計上の資本が毀損され、投資余力がなくなる等々、あまり良
いことはない。日本の方が米国に先行して景気が持ち直してきそうな気配がある
ので(特に金融システムのダメージ度合の違いから)、ファンダメンタルズ面で
も放っておくとじりじり円高に進みそうな感があり、新政権下での通貨政策も特
段方向性が見えてこないので注意が必要だ。

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■期待と不安
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リーマンショックから一年。早いものだ。思い返してみれば、リーマン証券破綻
の報道が伝えられてから数週間の内は、渦中にあった米国においても多くの者は
金融システム不安や信用リスクの高止まりがここまで長期化するとは思っていな
かったし、それだけに極めて濃度の高い悲観色が形成されたとも言えよう。

さて、各国GDPもようやく前期比プラスとなってきて、年初の悲観論一色の状
況からはどうやら抜け出してきた。私が居を構えているここ米国でも年初に打ち
出された様々な景気刺激策が個人消費にも大きな影響を与えており、身近なとこ
ろでは新車購入支援の為の助成金支給が挙げられる。これは燃費の悪い自動車を
下取りに出して燃費の良い自動車を購入すると一台当り数十万円相当の助成金が
支払われるというもので、環境保全を名目とした自動車産業支援策である(結局、
この制度の最大の恩恵を受けたのは燃費効率の良い車種を多数有する日本メーカ
ーであったが)。助成金に加えて、通常の自動車販売ディーラーの割引もあるわ
けだから、この予算バラマキに消費者が飛びつかぬはずはなく、あっという間に
助成金予算が底をついた。米国においてGDPに占める個人消費のウェイトは日
本同様に大きく、また、自動車販売は金額の桁が大きいだけあって経済指標に影
響を与えやすい。今年新たに打ち出された時限立法的な助成金施策はこれに限っ
たものではないが、この手の景気対策を受けて米国の7−9月期GDPや個人消
費指標もきっとよい数値となるだろう。

日本においても同様である、定額給付金、エコポイント等々、その政策の善し悪
しの議論はあるだろうが、実際のキャッシュアウトを伴う財政出動(「真水」と
呼ばれるもの)は間違いなく経済指標を改善させる。

とはいえ、この手の指標改善は「消費の先食い」をもたらすものであり、財政支
援が途切れた時にことごとく反動減が発生する。民間部門、とりわけ経済の潤滑
油とならねばならない金融システム部門は依然脆弱であるので、歯車が滑らかに
回転し、景気牽引役が民需へとバトンタッチされるにはまだまだ相当な期間が必
要であろう。俄かに広がってきた景気持ち直し感も、各国にて年初から春先にか
けて打ち出された強力且つ緊急的な景気刺激策・財政出動に拠るところが大きく、
もう暫くはそのカンフル効果が継続するだろうが、飽くまでも一時的なものと割
り切っておいた方がよいだろう。

各国の財政事情を考えれば、財政出動も無限にできるわけではないし、仮にでき
たとしても(財政出動→国債需給悪化→長期金利上昇という流れで)悪い金利上
昇へと繋がってくる。財政出動に限りがあるとすれば、これを金融政策にて補完
する必要が出てくる。低金利策により金利を低位安定させることにより、景気の
下支え、長期金利の上昇抑制を図るという流れである。長期金利は国債等のリス
クプレミアムの無い金利は確かに低位安定しているが、企業の調達金利にはこれ
に信用リスクを加味したリスクプレミアムが上乗せされる(所謂、上乗せ金利)。
このプレミアムの動向が新聞誌面にて紹介されることはなかなかないが、依然と
してリーマンショック前とは比べ物にならないレベルにて高止まっている(ただ
し、この点は日米と比べれば、明らかに日本の方が状況が改善してきている)。

2009年中は上記のような状況から慎重にならざるをえないが、2010年初
よりの企業部門の動き(投資計画等)には注視をしている。とにかく、2009
年中は日本・米国・欧州問わず、企業は極端なまでに費用支出や投資を抑制し、
様々なリスクに対しても過敏に保守的となってきた。多くの企業は超短期的な視
野にて状況改善に努めており(対株主上、そういう行動をとるのが経営者として
は最も無難とも言える)、2010年以降のことはこれから考える、要すれば、
「白紙」状態、というスタンスをとっている。企業の事業計画は基本的にはに年
度単位なので、年度中に計画・行動が大きく変わることはない。しかし、来年度
に入り、企業側も経済指標の緩やかな好転や株価の戻り等を確認し、少々保守的
過ぎたことに気付き始め財布の紐が緩んでくる可能性も高い。この緩み具合と財
政出動効果の持続性とは極めて微妙な関係性をもって左右しあい、実体経済その
ものが劇的に改善することはないだろうが、財政によるカンフル剤が切れた時の
企業心理の状態の確認は流れを読む重要なポイントの一つであろう。

ただ、このチェック作業を行う適切なタイミングはもう少し先であるので、個人
的には今は静観。期待と不安が交錯する中、待つは仁、休むも相場と割り切って
いる。

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=後記=

日本もすっかり秋らしくなってきたのではないかと思います。こちら米国もハロ
ウィンの時期が近づき、雰囲気も秋色になってきました。最近ダッチオーブンを
購入し、ローストチキン、ビーフシチュー等々色々なメニューを試しています。
米国においては、とにかくキャンプ用品が安く、キャンプシーズンの終わるこの
時期は特売されることも多く、お買い得です。キャンプ用品だけでなく食材も非
常に安い。特にカリフォルニア州は米国の中でも最大の食糧輸出州、スーパーに
言っても安いのでつい色々と買いこんでしまいます。ダッチオーブンに野菜類を
ごろごろ入れると柔らかくホクホクになって絶品なのです。【編】

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