5. 荒天時にありがちなトラブルと対処法
タッキングができない!
波の高い日はタッキング中に艇が波に叩かれて、艇が止まりタッキングできなくなるケースがよくあります。そのような時に効果を発揮するのが波舵です。波舵とは、艇がバックしている時に舵を切って、前進している時とは逆の方向に艇を進ませる方法です。従って、スキッパーの移動後にタッキング失敗となったら、ティラーを押して舵を目一杯前に切りましょう(タッキングが成功していれば、通常は風下に艇を向けるためにティラーを少し引きますが、この逆のことを行います)。そうすると、波を越えようとする時に波に押されて艇がバックし、風下に向いていくので、波を越えた後にすかさずティラーを真ん中に戻してメインシートを引き込めば、艇はクローズホールドにて走り出します。
艇を止められない!
艇を海上で停止させる手順は、まずクローズホールドから風上(デッドゾーンの風位)への艇の向きを変えていき、シートも解放してセールをシバーさせます。そして、速度が十分に落ちたらティラーを押して、そのままにしておけば、どんなに風が強くても静止の状態が保てます。
バウ沈してしまう!
バウ沈とは、ハルの先端部(バウ)が海中に突っ込み、前につんのめって沈をすることいいます。微風・軽風の時にはこのようなことはまず起こりませんが、中風・強風の時には、特に風下側(スキッパーから遠い方)のバウに注目し、海中に突っ込みそうになったら、シートを緩め、ティラーも押すというのが基本的な対処法です。これを行う時、よほどの緊急事態ではない限り、シートやティラーの操作は微調整で十分です。
オーバーヒール沈してしまう!
オーバーヒール沈とはクローズホールドからアビーム角にて帆走中に、突発的な風(ブロー)が吹きこんできた時にシートの引き込み過ぎで過度のヒールを抑えられず、風の力に負けて横倒しになってしまうことをいいます。前方の波を見て風の強弱を前広にキャッチすることが大切ですが、ブローが吹いてくる時にはトラピーズに出て体重を外側に出し、ヒールを潰せるなら潰してしまいましょう。体重で抑えきれないならば、シートを少し緩めて風を逃がします。
スタン沈してしまう!
スタン沈とはハルの後方(スタン)に重心が集まり、後ろにひっくり返るような形で沈をすることをいいます。これは、強風でのタッキングにて(または、艇がデッドゾーンにて止まっている時)、体重が後ろに偏っていると、波に叩かれジブに裏風が入ることによって起こり得ます。風が強く、波の高いときはクルーがタッキングの際にできるだけ前方に移動して、艇のバランスを整えることで対処します。そして、ジブに裏風が入ったら、ジブシートを緩めることで力を逃すことができます。
沈した状態から起こせない!
合計体重が120キロ程度あれば、理論上はかならず起こすことができますので、あせらずに対応して下さい。沈をしている時に、メインシートやジブシートが解放されていないと、セールにかぶった水が重りとなり、艇が持ち上がりませんので、シートがカムされていないかのチェックを行って下さい。体重が軽すぎる、または、自信の無い時には単独で出艇するのは辞めておきましょう。
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